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「五文型」が全く必要ない簡単な理由

「わからない」「必要ない、いらない」「やる意味ない」「嫌い」とよく言われる五文型ですが、なぜいまだに各地で教えられているのでしょうか。

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「五文型」が全く必要ない簡単な理由

EBIオンライン家庭教師のEBIです。五文型、勉強してますか?

私が英語を教えている時、学校で実際に習っていたときも、五文型について正しく理解できている人は少なかったように思います。
英語力が高いのに、五文型の話題にはついていけない人もいました。

市販の文法書や、学校や塾で教わる英文法といえば最初に五文型の勉強があるのが定番です。しかし、本当に五文型は役に立つのでしょうか。

私の意見は、英語力をつける上ではほとんど意味ない・必要ないが、専門に勉強する人は知っておいても損をしない、です。

私自身、高校生だった時は五文型について全く理解できませんでしたが、英文は書けました。留学経験があったわけでもありません。
むしろ、五文型にこだわるほどドツボにハマります。その理由を解説します。

五文型って何?

「必要がないよん」といっても、実際学校の定期テストで出題されるのでなんとか知っておきたいという方はいると思います。

そこで、そもそも五文型とはどういったものなのか、確認をしておきましょう。

なお、この文型にでてくるS、V、O、Cの記号は品詞ではなく文中の役割を示していることに注意してください。

第一文型 SV

I ran.
I smiled.

第二文型 SVC

I am Ken.
I became a doctor.

第三文型 SVO

I like apples.
I know him.

第四文型 SVOO

I gave him a present.
I lent him some money.

第五文型 SVOC

I made him angry.
I named my dog Taro.

「どれが第何文型やねん!!」という方は「真ん中がOいっぱい」で覚えてみてください。第三、第四にはCが含まれていません。

英語を感覚的に捉えてきた人には特にOとCの違いがわからないかもしれません。そこで、説明しやすい第二文型から見てみます。

第二文型をとるVはbe(am, is, are), becomeなどごく僅かな単語しかありません。意味は例文で言うと「I=Ken」「I=doctor」が成り立ちます。この場合のKen、doctorがCの役割を果たします。これさえわかってしまえば意外と簡単です。

これに対し、第三文型においてapplesやhimに来ている単語がOになります。S→Oという向きで力を及ぼしていたり、何かを考えていたりします。S=Oではありません。

なお、SVOCMは以下の略語です。

Subject
sub-(下に)+ject(投げる)→従う→従えることから主題に

Verb
verb(言葉)という意味が動作を表すようになった

Object
ob-(に向かって)+ject(投げる)→対象物、目的語の意味になる

Complement
com(一緒に)+ple(埋める)+ment(モノにする)→一緒に埋めることで文を完成させる→補語

Modifier
modify(調節する)+ -er(物)→「文を調節するもの」
ちなみにmodeには「形」、-ify には「〜にする」という意味があります。補語は文章を「形にするもの」です。

五文型信仰の重大な欠陥

上に書いたように、五文型ではSVOCのどれにも当てはまらない要素をMと分類します。

Mは省略可能なオマケ要素のように扱われます。

I studied English yesterday.

のyesterdayのように、目的語にも補語にもならない役割をするものと解釈されます。このyesterdayは省略しても問題なく通じますね。

…さて、以下の文章について文型はどうなるでしょうか。

I’m in the kitchen.

I live in London.

この二つの文は「第二か第三っぽい?」とお考えの方もいるかもしれませんが、第一文型に分類することになっています。文法的に言えばin the kitchenやin Londonは副詞句であり、文を構成する必須の要素とみなされないからです

amlive

でも、普通liveの後にはin どこどこと書いたり、am, is, areの直後に場所を書くことはありますよね。でも省略可能、オマケ扱いなんです。これは不思議な話ですよね。

このように、五文型は基本的な例文に対してですら、現実に即していません

なお、ここで「I am in the kitchen.」を第一文型とみなしましたが、「in the kitchenは必須の要素だからSVCとみなせるのではないか」という議論もあります。

そもそもネイティブでも混同している

現在、これらの表現は一般的なものと見なされています。

The person who emailed to you yesterday is me.

Who is the woman in the picture? - That is me.

本来、上の文章のmeの部分にはIがこなくてはなりません(文法的な説明をすれば、meの部分は目的語ではなく補語な上に主語について説明している主格補語だからです)。しかし、これをmeとする表現はそこかしこに見受けられます。

その理由は、補語と目的語が混同されているからに他ならないと考えます。

英語をしっかり勉強してきた人は「補語と目的語なんてそもそも役割が全然違うじゃないか」と思うかもしれません。それはもちろんその通りなのですが、OとCは第二文型、第三文型をみてみれば同じ位置にあります。混同が100%起きないとは言い切れません

教科書も混同した表現を採用している

小学校の英語科で使用されているデジタル教材では、「This is ME!」という名前の絵本を扱う内容が存在します。この教材は小学生に対して使われることもあり、ネイティブの方々等による慎重な校正が行われているはずなのですが、「間違っていないもの」として混同が起きています。

七文型と八文型???

大学で英語英文学科などに進んだ人は第七、第八文型なるものを学習するそうです。

文型の羅列は省略しますが、この七文型や八文型はA(Adverbial、義務的な副詞句)という新しい要素を加えることで先述した五文型の弱点を補おうとした物です。

I’m in the kitchen.

I live in London.

のin the kitchenやin Londonを義務的な副詞句A(文に必要な要素)と見做そう、ということです。

しかし、これも「何を義務的とみなすか」ということについて人によって解釈が異なり、さまざまな説が提唱されています。

このように、文型の理論はいまだに定まっていません
綺麗にはまって合理的に教えられるような文型が提唱されていない以上、私は五文型を信仰して「流行っているから…」「今までこう教えてきたから…」と批判も無くして教えることに断固として反対します。

五文型にたよらずに単語を覚えるには

五文型を常に意識することが無意味であることは充分説明できましたので、次はどう単語を覚えればいいかということに目を向けてみます。

例えば、likeについて考えてみましょう。「好く人」がいて、「相手」がいます。これは単純ですね。

love

しかし、giveについてはどうでしょうか。giveは「あげる人」はいいですが、「あげる物」「あげる相手」についてはどう表現すれば良いのでしょうか。

give

結論は「相手が2つ以上の時は語順と単語で意味を決める」です。

「貰う人」「物」の順で並べることを認めることで、簡単に英文を作れるようにしました。

give

これまでの常識から考えて、「him a present」という語順は奇妙です。

なぜなら「*I like apples bananas.」とは言いませんし、「*I you love apples.」とも言うことはできないからです。「and」で繋いであげる必要がありますね。

それがないのにモノが二連続で来るのですから、「これはhimにa presentをあげたんだ!」と理解することができます。

あとは4つのことを押さえておきましょう。

1.この形を取るのはgiveだけではないかもしれない

こういうアイデアがgiveにだけ見られるか、と言われると普通そうではないとおもいます。

例えば、makeやteachと言った単語も同じ形を取ります。詳しくはご自分で調べてみてください。

2.単語が長くなることもある

例えば、「him」を「a man who helped me clean my room yesterday」に、「a present」を「a colorful box painted by a famous artist」に書き換えると途端に意味がつかめなくなります。

これを克服するために「五文型」「直接目的語」「間接目的語」といった単語を出して説明を試みるのが普通ですが、「I give him a present.」のような短い例文と対比してみれば簡単に理解できます。

3.書き換えをすることもできる

この例文だと、「I give a present to him.」というように書き換えることができます。

「プレゼントをあげる」の部分をlikeと同様に「give a present」というふうにして、あげる相手をtoの矢印で指定することで「a present→him」の図ができあがります。

4.Passive voice(受動態)に直す時に複数パターンがある

ここでは詳しく触れませんが、この文章において「される側」の立場にいるのは「him」と「a present」の両方なのでPassive sentenceに書き換える時は少なくとも二通りの書き方があることもわかります。

「A present is given to him (by me).」「He is given a present (by me).」両方同じ意味です。

気づきました?

…さて、ここまでのgiveに関する説明で、私は「SVOO」とも「目的語」とも「授与動詞」とも言っていません。

しかし、簡単な例を出しましたので皆さんも理解できているはずです。

「五文型というものはだな~」と説明しなくても、こんな風に理解していけば小学生でも同じように理解することができます。

日本以外で五文型はどう教わるか

結論から言うと、そもそも教わりません。五文型を「英語の代表的なルール」かのように喧伝しているのは日本だけです。「五文型 日本だけ」で調べると山のように記事が出てきます。

そもそも日本では、英語を「実際に使う言語」ではなく「外国語」として学びます(English as a Foreign Languageと呼ぶこともあります)。
そのため、英文を分類して解析することができ、しかも一見そう複雑ではない五文型を頼った結果今のようなわかりにくい「英文法書」だらけになってしまったものと推測します。

インターネット上の情報だけだと弱いので、私の実体験もお話しします。

私はGrammar in useという英語で書かれた参考書(世界的なベストセラーです)を使って授業を行い、また自らも学習に使っています(お世話になっております)。

日本語の英文法書を買うと「名詞」「形容詞」や、あるいは「文型」から始まるようになっていると思いますが、Grammar in useには文型という概念がそもそも登場しません
世界的ベストセラーの「英文法書」が五文型を一切扱っていないのです。

この事実だけで、五文型が英語を習得する上で「必須」だとか、「五文型を制するものは英語を制す」というのは妄言ということがこの上なくはっきりとわかります。

例外:文法の専門家は別

英語の文法を専門に勉強しようと考えている方は、例文や用法だけでなく「このような説が提唱されていて日本においては主流になっている」ということを必ず知っておいてください。実のところ、私も教える時に「五文型が~」ということは決して口に出しませんが、知識としては持っています。

それ以外の方は「giveってこんな使い方もできるんだ!」「makeってこんな表現もできるんだね~」でいいです。番号・記号を機械的に暗記して英語力が伸びるわけがありません。意味を理解することが肝心なのです。

gift

終わりに

この五文型信仰が定着したことで、日本人は英語を楽に習得できるように…もちろんなっていません。ご存知の通りです。
「結局あれってなんだったんだろう」という意識だけを植え付けて終わってしまっています。

先述したように、文章の構造は動詞が規定します。その内容は多様なために「第一、第二…」と言う大枠をつけて分類することに研究上の意味はありますが、学習する上での必要性はありません。

そういうわけで、文型にとらわれることなく語彙を増やしていってもらえればいいな、と思って今日も授業にあたっています。

EBIオンライン家庭教師では、この記事の文体のように生徒を文法用語で煙に巻くことなく、イメージや例をたくさん交えてわかりやすくお教えしています。

参考文献

清水建二、すずきひろし、本間昭文(2018)『英単語の語源図鑑』 かんき出版

清水建二、すずきひろし、本間昭文(2019)『続・英単語の語源図鑑』 かんき出版

粕谷 恭子(東京学芸大学教職大学院教授)、直山 木綿子(文部科学省初等中等教育局視学官、国立教育政策研究所教育課程調査官 )(2017)「小学校外国語教育教授基礎論」第9回講義映像 放送大学

渡辺 勉(2018)『日本の学習文法で使われる5文型について』 拓殖大学機関リポジトリ

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